肌と精神①
医師からの診断は、急性アトピー性皮膚炎。
黄色い汁が出て悪臭も放たれるほど酷い肌トラブルに見舞われ、治っていったケースを目のあたりにしたのは、五名。
だからまったくアテにはならないが、参考に。
考察が浅い部分、間違っていると思われるものは教えてほしい。さらに、過程を見ているということは身内であるから、考察という言葉に重みをもたないことも承知しながら、敢えて使う。
五名のうち一名は、いわゆるオーガニックコスメの草分け。私の師匠である。
彼女と、ライターの女性が、同時期に急性アトピー性皮膚炎になった。二人は、アトピー性皮膚炎を食事で治そう、という記事にとりかかっていたところで発症。
師匠は、身体全体の皮膚がどろどろになり、黄色い汁が出てきて、包帯を巻かなければならない状態となった。足の裏も同じ状態で、歩くのが痛い。皮膚が溶けるようににじみ出る黄色い液からは悪臭もする。師匠に次いで、ライターの女性も同じよう症状を発症。師匠ほど酷くはないが、腕に包帯を巻いている。
アトピー性皮膚炎を食べ物ので治そう、という記事に取りかかったら、肌トラブルに見舞われる。
これはいったいなんだろう。
精神の深い部分、魂に近いあたりと、具象化の末端である肉体が交信しているかのようだ。
魂に近い、深い部分が、「アトピー性皮膚炎と食事の関連性についてやっと表層意識が気づいたようだな」と確信して、「よし。じゃあ、これまで溜めていた毒を出そう」と肉体に伝え、肉体が応じたのではないか。
「こうなったら、本当に食べ物で治すわよ」と師匠。
二人は、自分たちの書いている記事の通りに、あれこれと試して、半年もせずに通常の状況に復帰した。
彼女らの治し方は、当時としては先進的で、いまや一部で常識のものである。
合成化学物質を敬遠し、自然食・粗食を心がける。師匠は外食も控えた。なぜなら、外食産業の現場で使われる合成界面活性剤は、洗浄した後でも、食器に付着している可能性が高いからだ。
「外と内の境目があやふやになっている。その皮膚を治そうとしているのに、合成界面活性剤なんて」と師匠。
彼女は、ぐちゃぐちゃに溶けたような肌となった腕に包帯を巻いて、汁がにじみでてきているところをいたわるようにそっと触りながら言った。
当時は、今のように「食べ物が皮膚に影響する」という考えは一般的ではなかった。 なにしろ「君たちマスコミ(*)が、こういうことを無責任に書くから、困るんだ」とアトピー性皮膚炎の権威といわれる皮膚科医に叱られたほどである。
一般では、「食べ物が肌に影響する」と考えるよりも、「そうやって考え過ぎる方が良くないのよ。なんにもしなくても、ほら、私の肌はきれいでしょう?」と言う方が説得力のあった時代だ。
皮膚科を敬遠するのは、周囲からすると「どうかしている」「宗教にでも入っているの?」といわれかねない状況だった。
(*)私たちがたずさわっていたメディアは、マスではないのだが、情報に関わっているとそう言われることがままある。